名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 労働 >> 就業規則の不利益変更に対する労働者との合意と最低基準効との関係

就業規則の不利益変更に対する労働者との合意と最低基準効との関係

 就業規則に規定されている労働条件を引き下げる場合,個々の労働者が同意したとしても,引き下げることはできないことが,労働契約法12条に定められています(就業規則の最低基準効とよばれます)。

 就業規則の不利益変更に対する個別の労働者の同意と変更後の就業規則の有効性について最高裁平成28年2月19日判決(山梨県民信用組合事件)は,「労働契約の内容である労働条件は,労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり,このことは,就業規則に定められている労働条件を不利益に変更する場合であっても,その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き,異なるものではないと解される(労働契約法8条,9条本文参照)」と判示しています。

 就労働契約法8条と9条は,労働条件に関するいわゆる合意原則を定めている規定であり,最高裁は同意の有無について,「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるべき」と判示しています。