名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 債権法改正 >> 「履行に代わる損害賠償」と「履行とともにする損害賠償」と履行請求権との関係

「履行に代わる損害賠償」と「履行とともにする損害賠償」と履行請求権との関係

 債務不履行に基づく損害賠償は、債務が履行されたのと等しい経済的地位の回復を目的とする「履行に代わる損害賠償」と、債務の履行がされたとしてもなお残る損害の回復を目的とする「履行とともにする損害賠償」の二つに分類して議論されています。

 「履行に代わる損害賠償」は、本来の履行によって得られるべき経済的地位を金銭で実現することから本来の債務の履行を受けることは、二重どりになるという意味で両立しないことになります。

 改正民法415条2項は、債務不履行に基づく損害賠償として「履行に代わる損害賠償請求」を行うための一定の要件(①履行不能、②債務者の明確な履行拒絶、③契約の解除、④債務不履行による契約解除権の発生)を定めることにより、本来の履行を求める履行請求権を優先する考え方を採用したと考えられています。

 なお、上記②債務者の履行拒絶、又は、④債務不履行による契約解除権の発生の場合には、履行請求権も存在している、すなわち、履行請求権と「履行に代わる損害賠償請求権」が併存していることになり、両請求権の調整の規定は、明文上定められていません。