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抵当権の被担保債権が免責許可決定の効力を受ける場合には、当該抵当権自体が民法167条2項所定の20年の消滅時効にかかる(最高裁平成30年2月23日判決)

 判例タイムズ1450号40頁で紹介されています。

 最高裁は、「(1) 免責許可の決定の効力を受ける債権は,債権者において訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることができなくなり,上記債権については,もはや民法166条1項に定める「権利を行使することができる時」を起算点とする消滅時効の進行を観念することができないというべきである(最高裁平成9年(オ)第426号同11年11月9日第三小法廷判決・民集53巻8号1403頁参照)。このことは,免責許可の決定の効力を受ける債権が抵当権の被担保債権である場合であっても異なるものではないと解される。
 (2)ア 民法396条は,抵当権は,債務者及び抵当権設定者に対しては,被担保債権と同時でなければ,時効によって消滅しない旨を規定しているところ,この規定は,その文理に照らすと,被担保債権が時効により消滅する余地があることを前提としているものと解するのが相当である。そのように解さないと,いかに長期間権利が行使されない状態が継続しても消滅することのない抵当権が存在することとなるが,民法が,そのような抵当権の存在を予定しているものとは考え難い。
 イ そして,抵当権は,民法167条2項の「債権又は所有権以外の財産権」に当たるというべきである。
論旨は,抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合の抵当権自体の消滅時効期間は被担保債権の種類に応じて5年(商法522条)や10年(民法167条1項)である旨をいうが,そのように解することは,上記の場合にも被担
保債権の消滅時効の進行を観念するに等しいものであって上記(1)と相いれず,また,法に規定のない消滅時効の制度を創設することになるものであるから,採用することができない。
 ウ したがって,抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には,民法396条は適用されず,債務者及び抵当権設定者に対する関係においても,当該抵当権自体が,同法167条2項所定の20年の消滅時効にかかると解するのが相当である。」と判示しています。

 参照されている最高裁平成11年11月9日判決は,「免責決定の効力を受ける債権は,債権者において訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることはできなくなり,右債権については,もはや民法166条1項に定める『権利ヲ行使スルコトヲ得ル時』を起算点とする消滅時効の進行を観念することができないというべきであるから,破産者が免責決定を受けた場合には,右免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は,その債権についての消滅時効を援用することができない」と判示していました。

 破産手続きが同時廃止で終了したこともこのような紛争を生じさせた原因かもしれませんが,破産事件、不動産事件を扱う弁護士としては、必要な知識として理解しておく必要があります。