医師の時間外労働の視点
時間外労働の上限については,現行法制では,労働基準法に定めがなく,時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示154号)により,1か月45時間,年360時間という規制があるのみです。
医療機関に勤務する医師の時間外労働の長さは以前から指摘されていますが,以下のような理由も考えられ,医師不足の医療機関では,対策が難しいと思われます。
1 医師には,一般に公法上の義務とはされているものの応召義務(医師法19条)があり,「正当な事由」の解釈適用が厳格であること
2 診療が必要な患者をそのままにして医師が帰宅することが難しいこともあること
3 医師には宿日直勤務があり,本来,要注意患者の検脈,検温等の特殊な措置を要しない軽度あるいは短時間の業務を行うことが想定されていますが,入院患者の急変対応,救急外来の診療対応等をしなければならないこと
4 いわゆるオンコール対応が必要な体制も考えられること(この点に関する興味深い裁判例として,県立奈良病院産婦人科医判決があります。)
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