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合意制度の当面の運用に関する検察の考え方(最高検察庁新制度準備室)

 法律のひろば2018年4月号に掲載されています。

 「事案の選定について」という項目では、以下のとおり述べられており、合意制度の定着を図るためにも、検察庁としては事案の選定には慎重になるものと予想されます。

・ 合意制度を利用するためには、本人の事件についての処分の軽減等をしてもなお、他人の刑事事件の捜査・公判への協力を得ることについて国民の理解を得られる場合でなければならない。

・ 基本的には、従来の捜査手法では同様の成果を得ることが困難な場合において、協議の開始を検討することとする。

・ 協議の開始を検討するに当たっては、本人の協力行為によって合意制度の利用に値するだけの重要な証拠が得られる見込みがあるということや、協議における本人の供述につき、裏付証拠が十分にあるなど積極的に信用性を認めるべき事情がある場合でなければ合意しないこととなることを考慮する必要がある。

・ 協議の開始を検討するに当たっては、協議に時間がかかることや協議により取調べにおける供述の任意性に影響が及ばないよう配慮する必要があることなど、協議を行うことによる捜査・公判への影響をも考慮する必要がある。

 その他、特に気になった記述は以下のとおりです。

・ 協議に際しては、関係者に不信感を与えることのないよう、誠実な対応に努める必要がある。

・ 協議における本人の供述につき、裏付証拠が十分にあるなど積極的に信用性を認めるべき事情がある場合にのみ、合意することとする。

・ 検察官は、本人の事件の公判において、合意内容書面の証拠調べ請求を行うことに加え、必要に応じ、本人の協力行為の内容や真相解明への貢献度等を立証することが考えられる。特に、求刑について合意をした場合、合意した求刑を上回る判決がなされると、本人の離脱事由となり、合意が無に帰すとともに、求刑合意に対する信頼が失われ、合意制度の定着に影響を及ぼしかねない。・・・求刑に沿う判決が得られるよう、協力行為の具体的内容や真相解明への貢献度等を適切に主張・立証することが重要である。仮に求刑を上回る判決が言い渡された場合には、量刑不当を理由として控訴することも検討する。