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受託者が第三者に信託事務処理の委託を行うことが許される場合

  信託法28条は、①信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨又は委託することができる旨の定めるがあるとき(1号)、②信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当と認められるとき(2号)、③信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき(3号)、を受託者が第三者に信託事務処理の委託が許される場合として規定しています。

 立案担当者の解説では、信託事務の処理の第三者への委託について、受託者の義務としてではなく受託者の権限としてとらえたうえで、旧信託法よりも第三者への委託の範囲を実質的に拡大したものと位置づけています。

 なお、委託者が受託者を信頼して信託契約を行った場合に、その信頼の対象が受託者自身による事務処理に限られると考えることに違和感を持つ見解もあるようです。

 信託法35条は,「第28条の規定により信託事務の処理を第三者に委託」する場合の受託者の義務を定めており,同条1項は,「信託の目的に照らして適切な者に委託しなければならない」こと,同条2項は,第三者委託をした後について,「当該第三者につ対し,信託の目的の達成のために必要かつ適切な監督を行わなければならない」と定めています。

 信託法40条1項は,第三者への信託事務処理の委託について任務を怠った受託者について損失填補または原状回復の責任を定め,同条2項は,受託者が28条の規定に反して第三者に信託事務の処理を委託した場合の信託財産の損失填補責任について,委託と損失の発生との因果関係がないことを証明しない限り責任を負う旨を定めています。