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改正信託法における受益者保護の視点と民事信託

 平成19年施行の改正信託法では、取引の安全にやや傾斜しているのではないかという評価もなされているようです。

 とくに現在活用が期待される受託者が親族であることが想定されている民事信託ないし家族信託において、受託者が権限外の行為を行った場合の規律については注意を要すべき場合があります。

 受託者の権限違反行為の取消しについて定める改正信託法27条は、登記・登録できない財産についての取消要件(同条1項)と、登記登録できる財産の取消要件(同条2項)に分けて規定したうえで、後者の登記登録できる財産の取消要件について、信託の登記・登録のほか(2項1号)、受託者の権限違反について相手方の悪意・重過失を定めています。

 受益者保護の観点からは、少なくとも相手方の主観的要件として、「悪意・有過失」で足りるという見解も十分成り立つところであり、取引の安全にやや傾斜しすぎているのではないかという評価も可能です(旧信託法31条は、相手方の主観的態様にかかわらず、受益者による取消権行使を認めていました)。 

 以上の点については、弁護士が信託契約書を作成する際、さらに、受益者代理人などで関与する際にも、考慮しておくべき点といえると思います。