使用者の団体交渉誠実交渉義務
使用者は、労働組合から団体交渉の申入れがあった場合、団体交渉の席に着くだけではなく、誠実に交渉することが求められ、この義務に反すれば、団交拒否の不当労働行為となります。
この点についてカール・ツアイス事件判決は、「使用者には、誠実に団体交渉に当たる義務があり、したがって、使用者は、自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に示したり、必要な資料を提示するなどし、また、終局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務があるのであって、合意を求める労働組合の努力に対しては、右のような誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務があるものと解すべき」と判示しています。
具体的には、決裁権限のある者が交渉に臨んでいるか、適切な時期に適切な回数の交渉を行っているか、合理的な理由なく自らの主張に固執していないか、適切な資料を開示しているか等を踏まえて判断がなされているようです。
なお、そもそも団交拒否の正当理由になり得る場合として、交渉事項を理由とする拒否(経営や生産、役員の人事などのように労働関係に関係がないといえる事項)、交渉担当者・交渉方法を理由とする拒否(申入れられた時間や場所が不適切な場合や、交渉担当者以外の組合員や支援者が多数参加する場合など)等が実務上問題となります。
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