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だまされたふり作戦無罪判決(名古屋地判平成28年3月23日と名古屋高判平成28年9月21日)

 事案の概要は以下のとおりです。

⑴ 氏名不詳者が、被害者に対して息子を装って電話をかけ、現金を被告人宅に送るように要求。

⑵ 被害者の息子が詐欺であることに気づき、警察に相談。

⑶ 被害者が警察の指示を受けて偽物の現金が入った荷物を送り、被告人が荷物を受け取った段階で警察が逮捕。

 第一審名古屋地判は、①氏名不詳者との事前共謀を否定したうえで、②氏名不詳者との共謀が荷物の受け取りを承諾した時点で成立していたとしても、「詐欺既遂の現実的危険という本件詐欺未遂の結果が既に発生し終わった後に、被告人が関与したことになるから、被告人の同日の行為が本件詐欺未遂の結果と因果関係を有することはな」いとして無罪を言い渡しました。

 控訴審名古屋高判は、①事前共謀は否定したものの、②いわゆる不能犯の議論を参考にしながら、「行為時の結果発生の可能性の判断に当たっては、一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識していた事実を基礎とすべきである。」との規範を定立して詐欺未遂罪の成立の余地を理論的に認めつつ、共謀の立証がないとして、結論として無罪を言い渡しています。

 同種の事案が多数あるようですので、刑事弁護を担当する弁護士は、承継的共同正犯に関する最高裁平成24年11月6日判決との関係でも整理しておく必要がありそうです。

 法学セミナー2017年3月号では,高裁判決について,「結果発生が不可能となってから共犯関係に入った者の罪責」という表題で解説がなされているようです。