名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 労働 >> 私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約が3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえないとされた事例(最高裁平成28年12月1日判決)

私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約が3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえないとされた事例(最高裁平成28年12月1日判決)

 櫻井龍子裁判官の補足意見では,

 「有期労働契約が引き続き更新されるであろうと いう期待と,無期労働契約に転換するであろうという期待とを同列に論ずることが できないことは明らかであり,合理性の判断基準にはおのずから大きな差異があるべきといわなければならない。無期労働契約への転換は,いわば正社員採用の一種 という性格を持つものであるから,本件のように有期労働契約が試用期間的に先行 している場合にあっても,なお使用者側に一定範囲の裁量が留保されているものと 解される。そのことを踏まえて期待の合理性の判断が行われなければならない。」

 「労働者の主観的期待を基準 に考えるのではなく,客観的にみて法的保護に値する期待であるといえるか否か を,様々な事情を踏まえて総合的に判断すべきもの」

という指摘がなされています。

 本件では原審が破棄されていることからも分かるとおり,弁護士には難しい判断が求められる論点といえます。