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賃金請求と損害賠償請求の違い

 使用者の安全配慮義務違反により傷病にり患し休業した労働者としては,民法536条2項に基づき不就労期間の賃金を請求する法律構成と,債務不履行(民法415条)もしくは不法行為(民法709条)に基づいて損害賠償請求する法律構成が考えられます。

 それぞれの法律構成から考えられる違いとしては以下のものが考えられますが,裁判例は,労働者に有利な方を認容する傾向にあるようです(君和田伸仁著「労働法実務解説5解雇・退職」(旬報社。2016)205頁参照)。

1 賃金請求では残業代請求を計算基礎に含められないことが多いのに対し,損害賠償請求では計算基礎に含まれる。賞与についても,賃金請求では認められないことが多い。

2 賃金請求では,労基法24条1項が規定する全額払いの原則から過失相殺による減額がされないのに対し,損害賠償請求では過失相殺(訴因減額)がされやすい。

3 その他,損益相殺の有無,消滅時効の期間が異なる。