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藤田宙靖「最高裁回想録」読了

 藤田宙靖「最高裁回想録 --学者判事の七年半」(有斐閣)を読みました。

 同氏は,東北大学法学部の行政法学者であったところ,就任した平成14年9月30日から定年退官する平成22年4月5日まで最高裁判事を務められたた方です。

 本書はまず,最高裁判事内定の場面から話が始まり,最高裁判事と最高裁調査官の関係及び宮中・天皇との関係等具体的な記載があります。

 以下のような記載もありました。

  「法廷で「人殺し!」と叫ばれたことにショックを受けて熱烈な死刑廃止論者となったという学者出身の元裁判官の話を聞くが,もしそれが事実であったとするならば,随分甘い考えで最高裁に入られたのではないかという思いを否定することができない。」(同書125ページ。死刑事件及び死刑制度について述べる部分)

 「・・・,私は,数多くの上告棄却判決・決定に署名をし,押印を繰り返したのであった。尤も,検察官の意図的な証拠改竄などという事実が現にあるということが,当時既にあまねく知られていた事実となっていたとしたならば,あるいはその判断に若干の違いが出ていたかもしれない。」(同書132ページ。証拠評価に当たり,原審の事実認定を前提とする判断をする際の心理を説明した部分)

 
 他にも,興味深い記述がたくさんあり,同僚の弁護士にも一読をすすめています。

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