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滞納処分としての差押処分が,給与により形成された預金債権のうち差押可能金額を超える部分について違法とされた事例

 判例タイムズ1470号31ページで紹介されている大阪高裁令和元年9月26日判決です。

 差押処分の取消請求についての訴えの利益,配当処分の取消請求についての訴えの利益は否定し,配当処分の無効確認請求については,不当利得返還請求ができることを理由に補充性を否定したうえで,不当利得の要件のなかで本案の検討を進めています。

 本判決は,原則として給料等が金融機関の口座に振り込まれることによって発生する預金債権が差押禁止債権としての性質を承継するものではないとしつつ,国税徴収法76条1項及び同2項が給与生活者の最低の生活を維持するために必要な費用等に相当する金額を差押禁止にした趣旨をふまえ,実質的に差押えを禁止された給与等の債権を差押えたものと同視できる場合には,違法となると判示したものです。

 民事執行法上の差押さえの場合には,滞納処分とは異なり,債権者が当該預金債権の原資が給与であるか否かは不明である点がら,滞納処分としての差押えと大きく異なると言えます。