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転居命令違反が解雇事由になるかが争われた事例(消極)

 判例タイムズ1467号185頁に掲載されている東京地裁平成30年6月8日判決です(東京高裁平成30年11月14日判決で公訴棄却の判断がなされているとのことです。)。

 事案は、配置転換により勤務場所までの通勤時間が約3時間となったところ、会社が、勤務場所近くに転居するよう転居命令を発したが労働者が従わなかったことから、解雇したというものです。

 会社が、当該労働者の長距離通勤が労働安全衛生法上不相当であると考えたことが事の発端だと考えられ、裁判所も、一般論として、個別の合意なく労働者の勤務場所を決定し、勤務場所の変更に伴う居住地の変更を命じて労務の提供を求める権限を有する旨判示しています。

 そのうえで、当該転居命令が発された時期や、早朝・夜間の勤務の必要がないことや緊急時の対応が必要ないこと等の業務の内容、単身赴任による負担との比較等を具体的に検討し、転居を命令する義務まではないと判断されています。

 判例タイムズのコメントによれば、転居命令について判断した裁判例は見当たらないということで、労務管理を考える際に、その判断枠組みや事実の検討が参考になるものと思います。