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求人票の記載と労働契約の内容が異なる場合の効力

 求人票記載の労働条件と実際の労働条件とが異なる場合の法的な処理については議論があります。

 京都地裁平成29年3月30日判決は、求人票記載の労働条件と就労開始後における実際の労働条件とが異なる事案において、①就労開始後の契約書面に対する労働者の署名等を労働条件の変更に向けた同意の問題と位置付け、②同意の認定に際し、最高裁平成28年2月19日判決(山梨県民信用組合事件)の法理を参照し、結論として、求人票記載の労働条件による労働契約の成立を認めました。

 同最高裁判例は,就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に関する同意には,「労働者の自由な意思に基づいていされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する」ことを要すると判示しています。

 京都地裁の事案は,有期契約か無期契約か、定年制の有無等に違いのある事案であり、求人票記載の労働条件は一応の見込みとはいえず記載の条件で労働契約が成立したと認定される場合には、変更の同意の有効性は厳しく判断されることになりますが、求人票記載と異なる労働条件となることについて、採用面接、採用通知、書面の署名押印の時点で使用者からの十分な説明がないとの認定がされていることにも注意が必要です。

 求人票の記載が申込みの誘引とは単純に認められないことが明らかにされたという評価も可能だと思います。