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遺言者生存中に遺言無効確認の訴えを認めるべきと考えられる場合

 一般に、遺言者が死亡するまでは受遺者になんらの権利も生じておらず、受遺者には事実上の期待があるにとどまるという観点から、遺言者が生存中には、遺言から生じる権利関係や法律関係を否定するために遺言無効確認請求をすることはできないと考えられています。

 最高裁平成11年6月11日判決は、遺言者が意思能力を喪失し、遺言の撤回可能性がないという事案においても、「遺言者の生存中は遺贈を定めた遺言によって何らの法律関係も発生しないので、受遺者とされた者も何ら権利を取得するものではなく、単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有するにすぎず、このことは遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても変わるものではない」として、遺言者生存中の遺言無効確認の訴えは不適法である旨判示しています。

 証拠の散逸防止や、将来ほぼ起こる紛争を予防することが期待できるを理由とする反対論もあります。