執行停止の要件
行政行為について取消訴訟が提起された場合について,行政事件訴訟法は執行不停止原則を採用しています。
したがって,行政行為の執行停止を求める場合には,執行停止の申立てを行い認容される必要があります。
また,執行停止の申立てを行うには本案の取消訴訟が係属している必要がありますが,同日に申立てをすることも多いのではないかと考えられます。
実務上は,執行停止の申立書に,別紙として訴状一式を提出することになりますが,執行停止の申立書には,「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」という積極要件と,「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」及び「本案について理由がないとみえるとき」という消極要件を意識した記載が必要となります。
なお行政事件訴訟法26条1項は,「執行停止の決定が確定した後に,その理由が消滅し,その他事情が変更したときは,裁判所は,相手方の申立て,決定をもって,執行停止の決定を取り消すことができる」と規定していますが,「執行停止決定の取消し行われることは稀である。」,その理由として,「執行停止が認められる場合が厳格に制限されてきたことの反映とみることができる」(宇賀克也「行政法概説Ⅱ【第6版】300ページ」)と指摘されているところです。