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特別受益となる贈与が遺留分減殺請求の対象とならない特段の事情

 共同相続人に対する特別受益に該当する贈与は、遺留分侵害についての認識や時期を問わず、遺留分の算定の基礎に加算されること、したがって、遺留分減殺請求の対象になることは、最高裁平成10年3月24日判決で明らかにされています。

 一方で、同判決は、減殺請求を受ける相続人の利益が過度に侵害される特段の事情が存在する場合には、当該贈与に対する減殺請求が例外的に否定される場合を認めています。

 同判決の調査官解説では、相続開始の30年前になされた特別受益となる生前贈与が、被相続人がその後事業に失敗して破産したことにより遺留分減殺請求の対象となる場合には、受贈者の経済状況によっては過酷な結果をもたらすような場合には特段の事情が認められる可能性がある旨指摘されています。

 なお、相続法の改正により、遺留分算定の基礎に算入される特別受益となる贈与は、相続開始前の10年間に限ることとなり、実務上の影響が大きいものと考えられます。