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法人が司法取引の主体になる意味

 司法取引の主体となるのは、特定犯罪の「被疑者・被告人」ですが、平成27年5月20日の衆議院法務委員会において、林真琴法務省刑事局長(当時)が「現行の刑事訴訟法においても、会社等の法人も被疑者または被告人となり得るとされております。したがいまして、・・・法人もその合意の主体となり得るものと考えております」と答弁しており、法人が司法取引の主体となり得ることが明らかにされています。

 企業が、その役員や従業員による犯罪行為の捜査・訴追に協力することで、企業自体の訴追を免れたり軽い求刑を獲得するということが可能ということであり、企業の経営陣による不祥事が発覚してその経営陣が解任された後に、新経営陣がその犯罪行為の解明について協力するのと引換えに企業自体の刑事責任の軽減を目指すということが想定されます。

 一方で、従業員が少なくとも主観的には企業のために違法行為を行ったような場合に、当該従業員の捜査に企業が協力することで企業自身の刑事責任の軽減を図るという使われ方は違和感もあるところです。

 また、このような事案で、相談にのる企業側の弁護士としては、当該従業員が司法取引に応じる場合も想定されることから、一般的に指摘される引っ張り込みの危険についても考慮が必要となります。