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信託受益権を複層化した場合の評価方法

 信託受益権を複層化した場合の評価については,収益受益権と元本受益権を分けて評価し,元本受益権は収益受益権の評価額を控除した金額と扱うことが財産評価基本通達202⑶イロに定められています。 

 しかし,実務上活用が期待されている受益者連続型信託の場合で,受益権が複層化される場合については,収益受益権の受益者が,収益受益権のみならず元本受益権をも含めた信託財産の全額を取得したものとみなし,委託者からの取得(相続)時に受益者に信託財産の評価額に対して相続税が課税される扱いとされています(相続税法9条の3第1項)。

 国税庁ホームページでは,「法第9条の3第1項では、受益者連続型信託についての贈与税又は相続税の課税上、受益者連続型信託に関する権利(異なる受益者が性質の異なる受益者連続型信託に係る権利(当該権利のいずれかに収益受益権が含まれるものに限る。)をそれぞれ有している場合にあっては、収益受益権が含まれるものに限る。)に当該受益者連続型信託の利益を受ける期間の制限その他の当該受益者連続型信託に関する権利の価値に作用する要因としての制約が付されているものについては、当該制約は付されていないものとみなされることとされた。したがって、例えば、受益権が複層化された受益者連続型信託の収益受益権を個人X1が、元本受益権を個人Y1が有するものについて、収益受益権が個人X2に、元本受益権が個人Y2に移転した場合における課税上のそれぞれの受益権の価額については、当該収益受益権の価額は、当該受益者連続型信託の信託財産そのものの価額と等しいとして計算され、当該元本受益権の価額は、零となる。」と説明されています。