信託を設定する際の主な留意点
信託を設定する際には,様々な留意点がありますが,税の問題のほか,一般的に以下の点はよく問題になるものと考えられます。
1 受託者規制
信託業法2条は,業として,信託の引き受けを行う場合には,免許又は登録を要求しているので,弁護士が受託者となることはできないと考えられる。なお,信託業法施行令1条の2は,弁護士の預り金等について,信託業法の適用除外を定めている。
一般社団法人を設立し,受託者にするスキームを検討することもある。
2 遺留分への配慮
信託行為にも当然民法の遺留分の規定が適用される。
遺留分を侵害したか否かを判断するにあたり受益権の評価をする必要がある。
3 実効性のある監督・具体的方法
受託者は,成年後見人以上に横領への誘惑があると指摘される。
信託行為で具体的な条項を定めるほか,信託法上の監督機関として,信託管理人(受益者が現に存在しない場合に,受益者のために自己の名で受益者の権限を行使する者),信託監督人(受益者が現に存在する場合に,受益者のために自己の名で受益者の権限を行使する者), 受益者代理人(受益者の代理人として,受益者が有する一切の権利を行使する者)の各制度による対策も考えられる。
4 信託期間は長いこと
後継ぎ遺贈型受益者連続信託では,約100年信託が継続することも想定されるし,他の類型の信託でも長期間にわたることが想定され,信託を安定的に維持するため,変化を見越した条項を作成する必要がある。
5 信託口口座の開設
金銭を信託財産とする場合には,いわゆる信託口口座を開設できることが重要となる。信金などが積極的に応じるケースもあるという指摘もある。
6 後見制度との連携
信託は後見制度とは異なった形で財産管理を行うことができるが,身上監護については後見制度を利用する必要があるなど,各制度の連携を前提としたスキームを検討することが必要である。
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