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詐害信託と受託者・受益者の主観的要件

 信託の設定により信託譲渡された信託財産は、委託者の責任財産から外れることになり、委託者に対する債権者の利益が害される場合があり得ます。

 そこで、信託法は、民法上の詐害行為取消権と同趣旨の詐害信託についての取消権を規定しています。

 債務者側の要件として、債権者を害することが必要であることは、詐害行為取消権と同様と考えられますが、委託者が受益者の場合には、委託者が取得する受益権の価値を控除することとされています。

 主観的要件については、受託者は信託により固有の利益を有する者ではないので、「受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否か」は考慮されないことが定められ、利益を有する受益者の主観的態様は問題にされることになります。

 信託法は、多数の受益者が存在する場合も含めて、一部でも債権者を害すべき事実を知らなかった受益者がいれば取消権を行使できない旨定め、取消しを不当に免れる目的で無償で受益者として指定し、あるいは無償で受益権を譲渡した場合は取消権の行使が妨げられない旨規定しています。

 なお、取消権の被告が受託者であることは信託法11条が明示していますが、受託者が受益者の善意の主張立証を行うべきことは善管注意義務などから導かれると考えられますが、さらに受益者への訴訟告知などの義務があるのかも議論がなされています。