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信託設定意思と信託の定義の関係

 信託の成立には、信託意思、すなわち、委託者が信託を設定する意思を有していることが必要と考えられています。

 旧信託法下で出された、地方自治体が公共工事の前払金として建設業者に支払った場合に当該自治体を委託者権受益者、建設業者を受託者とする信託が成立したことを認めた最高裁平成14年1月17日判決は、本来は信託ではないが救済手段として認めたものと分析する見解と、「信託を設定する」という明示の意思を有していない場合にも信託設定意思を肯定できる事案であるという見解があったようです。

 改正信託法は、2条1項で信託の定義を定め3条で信託の方法を定めて、旧信託法よりも詳細な規定になっていますが、信託意思の具体的内容としては、信託の定義を意図することを指すのか、受託者の高度の義務のようなものまでを含んでいることが必要なのかの議論もあるようです。

 定義に着目する場合には、2条1項の信託の定義のなかで、財産の分別管理や信託財産の独立性の要素が書き込まれていないことから、不十分という指摘があり、プラスαの要素が必要だと考えられます。