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信託管理人、信託監督人、受益者代理人

 信託法が受益者のための機関として設置を認めている制度として、信託管理人、信託監督人、受益者代理人があります。

1 信託管理人は、受益者が現に存在しない場合に、信託行為によって指定される者であり、未存在の受益者のために自己の名をもって受益者の権利に関する一切の行為を行うため(信託法125条1項)、未成年者・成年被後見人、被保佐人はなることができません(信託法124条)。

 受益者の利益を保護する者として自己の名をもって権限を行使する点で、受益者の代理人ではありません。

 「受益者が現に存しない場合」とは、受益者が後に指定されることとなっている場合に加えて、生まれていない者を受益者にする場合を含むものと考えられています。

 信託管理人は、「委託者が死亡した時点」や「信託設定後5年を経過した時点」というような停止条件・始期の定めが認めれられています。

2 信託監督人は、信託管理人と異なり、「受益者が現に存する場合」に、信託行為によって指定され、一応、受益者が受託者の監督を適切に行うことができない場合にそれを行う機関として想定されています(裁判所による信託監督人の選任に関する信託法131条4項は、「受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合」に限っています)。

 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって単独受益権(信託法92条各号)を行使することができますが、受益権の放棄(同17条)、受益権取得請求権(同18号)、受益証券発行信託において自らが受益者であることの受益権原簿への記載請求権・同原簿の記載事項を記録した書面の請求権(同21号、23号)は除外されています。

 受益者代理人は、信託管理人・信託監督人がすべての受益者保護のための制度であるのに対し、自ら代理する受益者のために行為する者で、受益者本人が現存している必要があります。

3 受益者代理人は信託行為によって指定される者であり(信託法138条1項。なお、個々の受益者が自ら委任契約を締結し代理人を選任することは認められます。)、受益者保護目的の場合(幼い子を受益者とする信託の場合など)と、信託の運営を円滑に行う目的の場合(受益者の変動が予想される場合や、投資目的で受益権を有している受益者の場合など)が考えられます。

 受益者代理人によって代理をされる受益者は、単独受益者権を除いて権利を行使することができなくなります(信託法139条4項)。