名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 倒産 >> 第三債務者が差押債務者に対する弁済後に差押債権者に対してした更なる弁済は,差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合,破産法162条1項の規定による否認権行使の対象とならない(最高裁平成29年12月19日判決)

第三債務者が差押債務者に対する弁済後に差押債権者に対してした更なる弁済は,差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合,破産法162条1項の規定による否認権行使の対象とならない(最高裁平成29年12月19日判決)

 否認権についての新判例です。

 最高裁は、「債権差押命令の送達を受けた第三債務者が,差押債権につき差押債務者に対して弁済をし,これを差押債権者に対して対抗することができないため(民法481条1項参照)に差押債権者に対して更に弁済をした後,差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合,前者の弁済により差押債権は既に消滅しているから,後者の弁済は,差押債務者の財産をもって債務を消滅させる効果を生ぜしめるものとはいえず,破産法162条1項の「債務の消滅に関する行為」に当たらない。したがって,上記の場合,第三債務者が差押債権者に対してした弁済は,破産法162条1項の規定による否認権行使の対象とならないと解するのが相当である。」と判示しました。

 給与の差押命令の送達を受けたにもかかわらず債務者(破産者)に給料全額を支払った勤務先は,これにより給料債権自体は消滅したことになり,ただし,その支払いを差押債権者に対抗できないことに伴い差押債権者に支払った金額(いわゆる二重払い部分)については,破産法162条1項の規定による否認権行使の対象とならないということになります。