名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 信託, 相続 >> 自筆証書遺言の内容が、信託財産を遺産である譲渡制限株式とし、受託者を弁護士とし、受益者兼残余財産帰属権利者を未成年者である孫とし、信託終了事由を当該孫の成人とする遺言信託であると判断された事例

自筆証書遺言の内容が、信託財産を遺産である譲渡制限株式とし、受託者を弁護士とし、受益者兼残余財産帰属権利者を未成年者である孫とし、信託終了事由を当該孫の成人とする遺言信託であると判断された事例

 判例時報2325号41頁に掲載されている東京高裁平成28年10月19日判決です。

 遺言の文言は、「株券をB(孫)にあげる。Bが成人するまで弁護士Xが信託管理し、株券の権利行使は全部Xが行使する。」というもので、信託終了事由や残余財産帰属者という文言は使用されていません。

 本判決は、①Xに対する株式の譲渡について会社の承認がなく、②(仮にみなし承認があるとしても、)受益者全員の受益権放棄を認定し、本件遺言信託はBの成人前に目的達成不能により終了して清算に入り、信託財産である株式は残余財産帰属者であるBが取得すると判断しています。

 Bの親権者が行っている上記②の受益権放棄の有効性を肯定するにあたり、本判決は、遺言信託の遺留分減殺請求があった場合の法律関係が、「極めて難解」となることについて触れられています。

 匿名解説では、この論点の文献として、能見善久=道垣内弘人編・信託法セミナー⑶61ページ、道垣内弘人「信託設定と遺留分減殺請求」能見善久編・信託の実務と理論が紹介されています。