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認定司法書士の代理権が事後的に消滅する場合

 最高裁平成28年6月27日判決は,認定司法書士の代理権について,和解の対象となる債権債務の額を紛争の目的の額とする債権額説を採用した上で,依頼者の負う個々の債務の額を基準とする個別説を採用したと評価されています。

 その理由は,認定司法書士の代理権を客観的明確に決められるべきという点にあります。

 ただし,認定司法書士が相談を受けた段階では依頼者が個々の債務の正確な額を把握をしているとは限らないことから,受任通知発送後取引履歴の開示を受けるまでは,代理権の範囲内か否かが確定しないという事態は容易に想定されるところです。

 取引履歴の開示の結果,140万円以上の債務であることが判明した場合,当初から代理権はなかったということになります(町村教授は,司法書士法3条1項6号から8号までで認められた業務に必要な準備行為と解する余地があると指摘しています(平成28年度重要判例解説155頁)。)。

 以上とは異なり,当初は認定司法書士の代理権の範囲であったにもかかわらず事後的に消滅したと考えざるを得ないケースとして代位弁済により個別の債務額が140万円以上となるケースが考えられます。

 容易に想定されるのは,ある銀行とその系列の信販会社双方と取引がある依頼者について(それぞれ140万円未満の債務),任意整理を行ったところ,その信販会社が銀行の保証会社となっており,信販会社が銀行に代位弁済をした結果,その信販会社の債務が140万円以上となったという事案です。

 いずれの場合も,依頼者に不利益が生じないように速やかな対応が求められます。