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車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は令状がなければ行うことができない強制の処分か(積極)

 注目されていた事件です(最高裁ホームページ)。

 最高裁大法廷は,以下のとおり,いわゆるGPS捜査が,令状がなければ行うことができない処分であることを明確に判示しています。

「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによっ て,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であ るGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集30巻2号187頁参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しないものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである。」

  多数意見では,GPS捜査に対する令状として「検証」によることは適当ではない旨判示しているところですが,岡部喜代子裁判官,大谷剛彦裁判官,池上政幸裁判官の補足意見では,GPS捜査の特質を踏まえた立法的な措置がなされるまでの対応について以下のとおり判示しています。

 「GPS捜査の特質に着目した立法的な措置が講じられることがあるべき姿であるとの法廷意見に示された立場に賛同するものであるが,今後立法が具体的に検討されることになったとしても,法制化されるまでには一定の時間を要する こともあると推察されるところ,それまでの間,裁判官の審査を受けてGPS捜査 を実施することが全く否定されるべきものではないと考える。

 もとより,これを認めるとしても,本来的に求められるべきところとは異なった令状によるものとなる以上,刑訴法1条の精神を踏まえたすぐれて高度の司法判断として是認できるような場合に限定されよう。したがって,ごく限られた極めて重大な犯罪の捜査のため,対象車両の使用者の行動の継続的,網羅的な把握が不可欠であるとの意味で,高度の必要性が要求される。さらに,この場合においても,令状の請求及び発付は,法廷意見に判示された各点について十分配慮した上で行われなければならないことはいうまでもない。このように,上記のような令状の発付が認められる余地があるとしても,そのためには,ごく限られた特別の事情の下での極めて慎重な判断が求められるといえよう。 」