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インターネット上のなりすまし行為がアイデンティティ権を侵害することがあることを示した事例

 判例時報2313号73頁に掲載された、大阪地裁平成28年2月8日判決です。

 正確には、「インターネット上のなりすまし行為によって本人以外の別人格が構成され、本人の言動であると他者に受け止められるようになり、なりすまされた者が平穏な日常生活や社会生活を送れなくなるほど精神的苦痛を受けたような場合には、他者との関係において人格的同一性を保持するりえきであるアイデンティティ権を侵害することがあることを示した事例」となっています。

 事案としては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、インターネットサービスを提供した者に対し、原告になりすましてさまざまな発言を投稿した者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示を求めた事案で、結論としては請求を認めなかったものです。

 プライバシー権や自己情報コントロール権ではなく、あえてアイデンティティ権を認める意義については今後も議論が続くものと思います。

 プロファイリングの議論も参考になるかと思います(論究ジュリスト2016年夏号には、山本龍彦教授の「ビッグデータ社会とプロファイリング」という論文が掲載されており、日経新聞にはEUが規制する動きであることが紹介されていました)。