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アイドルとの握手券が付いたCDを大量に購入した場合,契約の取消しが認められるか。

 平成29年6月に施行される改正消費者契約法で,過量な内容の消費者契約についての取消権が導入されます(改正消費者契約法4条4項)。

 同規定導入の背景には,高齢者の判断能力の低下につけこんで大量の商品を購入させるという消費者被害が発生していたことがあるようです。

 なお,消費者庁が公表している一問一答の中に,「アイドルとの握手券が付いたCDを大量に購入したという事例 については,過量な内容の消費者契約の取消しが認められるので すか。」という問が掲載されています。

 その回答は,「1.このような事例では,一般的には,消費者が自ら商品をレジに持参して購入するものと考えられます。そのような場合には,事業者から消費者に対して勧誘がなされていないことから,過量な内容の消費者契約の取消しの規定は適用されないこととなります。2.また,仮に勧誘がなされた事例であったとしても,そのCDを発売したアイドルのファンである消費者が購入するような場合には,握手券が付いているという商品の内容や,そのアイドルのファンであるとい う消費者の生活の状況を考慮すれば,過量な内容の消費者契約には当たらないと判断されることが多いと考えられます。3.ただし,そのような消費者の生活の状況等を考慮したとしても,販売されたCDの枚数が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものである場合においては,事業者がそのことを知りながら勧誘し,それによって当該消費者が契約を締結したときは,過量な内容の消費者契約の取消しの規定が適用されることになります。」とされています。 

 この種の事案で,『事業者がそのこと(当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものである場合)を知りながら勧誘し』という要件の主張立証は難しい場合も多いと思われます。

 改正消費者法については,法律時報2016年11月号に特集が組まれています。