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研修費用返還義務と労働基準法16条(賠償予定の禁止)

 労基法16条は,「使用者は,労働契約の不履行について違約金を定め,又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と規定し損害賠償額の予定を禁止しています。

 労働者の研修や海外留学費用を使用者が負担した場合において,一定期間内に労働者が退職した場合は,研修・留学費用の返還を義務付ける規定が労基法16条違反となるかについて争われることがあります。

 返還約束が有効とされた裁判例,返還約束が無効とされた裁判例それぞれあります。

 この点について,荒木尚志先生の「労働法<第2版>」74ページでは,オールオアナッシングの枠組による解決は適切ではないとして,2006年に成立した「国家公務員の留学費用の償還に関する法律」が採用する留学後の在職期間に応じて比例的に償還額を逓減する方式が紹介されています。