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最高裁,求刑1.5倍裁判員裁判判決を破棄

 本日,裁判員裁判において検察の求刑の1.5倍の懲役15年を言い渡した判決を維持した高裁判決が,最高裁により破棄され,各被告人に対し,懲役10年,懲役8年が言い渡されました。

 本件第一審(裁判員裁判)は甚だしく不当な量刑判断に至ったものであり,第一審判決の量刑を是認した高裁判決が甚だしく不当であるとの結論を導いた理由を要約すると以下のようになります。

・我が国の刑法は,一つの構成要件において幅広い法定刑が定められており,裁判例が集積されることにより一定の量刑傾向が示される。

・先例の集積自体は直ちに法規範性を帯びないが,公平性を損なわないための目安になる。

・先例の集積結果に相応の変容を与えることが当然想定された裁判員裁判では,量刑傾向を厳密に調査・分析することは求められない。

しかし,

・他の裁判の結果との公平性が保持されるべきことはいうまでもなく,評議に当たってはおおまかな量刑の傾向を裁判体の共通認識とするべきである。

・第一審の判示によれば,おおまかな量刑の傾向を出発点としたうえで評議を進めたと理解できなくもない。

しかし,

・第一審判決は,量刑検索システムの妥当性が検証できないとして検察官の求刑を大幅に超過する宣告刑を導いており,これまでの傾向を変容させる意図をもって量刑を行うことも,裁判員裁判の役割として直ちに否定されるものではない。

しかし,

・公平性の観点から,従来の量刑の傾向をを前提とすべきでない事情の存在について,具体的,説得的に判示されるべきである。