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既払金の充当(交通事故)

 従来,自賠責保険金,任意保険金,各種の社会保険給付金について,交通事故により発生した損害賠償金の遅延損害金からではなく,元本に充当するのが実務でした。

 しかしながら,遅延損害金は民事法定利率である年5分の割合により発生するものでその金額は相当高額になることから,被害者(被害者の代理人となった弁護士)が,遅延損害金から充当するべきであるとの主張をするようになりました(なお,この問題は,被害者側の弁護士が充当関係について争点としたときに生じることになります。)。

 この論点についての主な判例の流れは,概略以下のとおりです。

 最高裁平成16年12月20日判決(被害者が亡くなられた事案)は,自賠責保険金に加え,労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金や厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金についても,遅延損害金から充当されると判断しました。

 上記最高裁判決に対し,大阪地裁平成21年2月16日判決(後遺障害の事案)は,労災給付金については元本に充当するのが妥当であるとの判断をし,その上告審判決である最高裁平成22年10月15日判決も大阪地裁の結論を支持しました。

 また,最高裁平成22年9月13日判決(後遺障害の事案)は,労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときには元本に充当されると判示しました。

 賠償額一般の計算方法については,こちらをご覧ください。

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 〈事務所備え付けのシャウカステン〉