場所に対する捜索令状の効力
刑事訴訟法102条は,捜索の対象を「人の身体,物又は住居その他の場所」と規定していますが,これらは保護される権利利益を異にすることから,令状においてそれぞれを区別特定して記載されることが想定されているといえます。
場所に対する捜索にあたり,人の身体を捜索することがおよそ認められないわけではありません。
刑事訴訟法によりある強制処分が認められる場合には,それに付随するその目的を達成するために必要不可欠な最小限度の強制力の行使も許容されていると考えられるからです。
例えば,捜索場所に居合わせた者が,捜索の最中に目的物を隠匿したり,破壊しようとした場合には,それは捜索に対する妨害行為といえますから,それを阻止するための必要な措置を行うことが出来ると考えられるのです。
それでは,捜索場所に居合わせた者が,捜索を契機として隠匿したわけではなく,もともとポケット等に捜索の目的物を入れていた場合はどうでしょうか。
客観的には捜索に対する妨害の結果を生じさせているとしてポケットを捜索することができるという見解は,刑事訴訟法上,捜索場所に居合わせた者が捜索差押えの対象となった目的物を提示する義務はないことから妥当とはいえないと思われます(そもそも,目的物であるかは捜索してみないと分からないでしょう。)。
捜索開始後に捜索場所に持ち込まれた物については,その中に差押えるべき物が存在する可能性がおよそない場合を除いては,捜索することができると考えられます。
なお,被疑者居室の捜索開始後に被疑者宛に配達された宅配物について捜索を認めた最高裁判例があります。
弁護士は,被疑者,被告人の弁護人として,捜査手続きに違法があれば,その問題点を追及することも求められます。
捜査手続きに重大な違法があるとして,刑事裁判のなかで証拠が採用されない場合もあり,そのことにより被告人に無罪判決が下されることもあります。