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約2ヶ月間にわたる、不特定多数人に対する、いわゆる路上募金詐欺が、詐欺罪の包括一罪とされ、さらに、その罪となるべき事実について、特定を欠くものではないとされた事例

 ジュリスト1429号に掲載された、最高裁平成22年3月17日第二小法廷決定についての島田聡一郎上智大学教授の判例解説です。

 包括一罪については、受験生時代、刑法及び刑事訴訟法における重要論点として時間をかけて勉強した記憶があります。

 当時、包括一罪を認めるためには、侵害された法益が同一の法益主体に帰属することが必要と理解していました。

 本最高裁判例は、詐欺罪において被害者が異なる場合、すなわち法益主体が異なる場合には、一般的にはこれを包括評価することは困難としたうえで、犯意・欺もう行為の単一性、継続性、組織的統合性、時や場所の接着性、被害者の集団性、没個性性、匿名性などの著しい特徴が認められる本件街頭募金詐欺においては、包括評価が可能であり、かつ、相当と判断しています。

 島田教授は、従来の判例・学説の理論的根拠を検討した上で、判例の結論に賛成しています。

 弁護士として、判例に反対する立場の論文を検討することも大切だと思います。

 実体法(刑法)及び手続法(刑事訴訟法)の重要論点を含む、司法試験出題可能性の高い判例といえるでしょう。