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濫用的会社分割

 難波孝一「会社分割の濫用を巡る諸問題」(判例タイムズ1337号20頁)を読みました。

 このテーマは、全国倒産処理弁護士ネットワークでも扱われたものであり(僕も参加しました。)、近時、判例、論文もたくさん公表されています。さらに、現在進行中の債権法改正でも論点となっており、実務的にも理論的にも重要なものといえます。

 以下、備忘録です。

〈説例〉

 債務超過に陥って倒産状態にある株式会社が、優良なA事業部門の資産とA事業部門の取引に協力する債権者に対する債務のみを新設会社に承継させ、不採算事業部門B等の不良資産及び残存債権者に対する債務を分割会社に残し、新設会社は分割会社に対し会社分割の対価として全発行株式を交付し、分割会社は当該株式を分割会社の親族あるいはスポンサーに対し安価な値段で譲渡する。

 分割会社は新設会社に承継された債権者の債務を重畳的債務引き受けをし、また、新設会社は、資本の増資をし、スポンサー等に割り当てる。

1 倒産時における会社分割の問題の本質

 会社分割によって発生する残存債権者、承継債権者との取扱いの差を見過ごすことができるか。

2 会社分割無効の訴え(会社法828条1項10号)

 会社法施行規則205条7号「債務の履行の見込みに関する事項」を記載した書面の備え置きを求めるにとどまっていることから、債務の履行の見込みがあることを会社分割の効力要件とするべきではない。

 →会社分割無効の訴えによる解決はできない。

3 会社法22条1項の類推適用(名称続用責任)

 新設会社が分割会社の商号を続用することは少なく、続用している場合でも会社分割後遅滞なく残存債権者に対し、残存債権者の債務を承継していないことを説明すれば新設会社は残存債権者の債務弁済をする必要がないことになる。

→効果的な方法とはいえない。

4 詐害行為取消権(民法424条以下)、否認権(破産法160条以下)

 この方法が妥当。

 この方法によった場合、①行使の可否、②対象、③詐害ないし偏頗性の判定基準、④取消の効果についてさらに検討する必要があり、特に、②から④については見解が分かれている。

 また、法人格否認の法理による解決が適する事案もあると思われる。