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被告人側の「控訴の利益」

 第一審の判決に対してその取消し・変更を求める不服申立てを控訴といいます。

 控訴の主体は,被告人側及び検察官側双方が想定されますが,被告人側の控訴については,当該事件における被告人の具体的救済を主眼と位置づけられることから,被告人に実益のない控訴は認められません。

 このような観点から,無罪判決が合った場合はもちろんのこと,免訴,控訴棄却の形式判決があった場合も被告人の控訴は認められません。

 一方で,検察官は「法の正当な適用」を求める地位にあることから(検察庁法4条),被告人の利益のためにも控訴することができるという意味で,控訴の利益の存在は要求されていません(以上について,酒巻匡「刑事訴訟法」623頁)。

 刑事事件における弁護士ないし弁護人の役割は,そういう位置づけということです。

(参照条文)

弁護士法第1条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。

2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。