『法人』該当性が争われている裁判(最高裁係属中)
アメリカのLPS(Limited Partnership:リミテッド・パートナーシップ)の法人該当性が争われています。
事案は,外国信託銀行を通じて米国デラウェア州に設立された不動産賃貸業を営むLPSに出資した納税者が,所得税の申告に当たり,本件不動産賃貸事業による損益が不動産所得に該当することを前提に,融資を受けた金融機関に対する支払利息や,建物の減価償却費を自らの不動産所得の損失として(所得税法26条),他の所得と通算して(所得税法69条)所得税の申告をしたところ,課税当局が損益通算を否認する更正処分をしたというものです。
所轄税務署長の主張として,LPSは法人に該当することから,納税者の不動産所得の損失に当たらず,したがって損益通算はできないというものです。
東京高裁,大阪高裁では法人に該当するとの判断(納税者敗訴),名古屋高裁では法人に該当しないとの判断(納税者勝訴)が示されており,それぞれ最高裁に係属中とのことです。
入手しやすい文献として,ジュリスト1458号107頁(今村隆日本大学教授の東京地裁平成23年7月19日についての解説),ジュリスト1439号8頁(渕圭吾学習院大学教授の名古屋地裁平成23年12月14日についての解説),ジュリスト1453号204頁(名古屋地裁平成23年12月14日についての吉村政穂一橋大学准教授の解説)があります。
チェック・ザ・ボックス規制など,いわゆるBEPS対策(Bese Erosion and Profit Shifting:税源浸食)にも広がりうる論点を含むものであり,最高裁の判断が注目されます。
<ジュリスト1453号>
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