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就業規則の不利益変更に対する労働者の個別同意

 不利益に変更された就業規則の効力について,

① 労働契約法9条(『使用者は,労働者と合意することなく,就業規則を変更することにより,労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし,次条の場合は,この限りでない。』)の反対解釈から労働者の個別の同意がある場合には合理性の審査は必要ないとする立場と

② 労働者の個別同意の有無にかかわらず不利益変更には合理性が要求されるという立場

 とが対立しています。

 なお,労働契約法10条は,『使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において,変更後の就業規則を労働者に周知させ,かつ,就業規則の変更が,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは,労働契約の内容である労働条件は,当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし,労働契約において,労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については,第十二条に該当する場合を除き,この限りでない。』と規定しています。

 前者の立場による場合には,いかなる場合に労働者の個別同意を認定できるかが問題になります。

 また,就業規則の最低基準効との関係や,就業規則の統一性・画一性の確保の問題が生じますが,変更された就業規則の効力を争った当該労働者と他の労働者との間に発生した不統一な状態は,就業規則の変更により労働条件を統一する必要が生じるものと考えられます。

 就業規則の不利益変更については,理論的にも実務的にも非常に難しい問題がありますので,弁護士に相談することをお勧めします。

(参考文献)

 大内伸哉「労働の正義を考えよう」(有斐閣・2012)116ページ以下

 荒木尚志「就業規則の不利益変更と労働者の同意」(法曹時報64巻9号・2012)1ページ以下