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所有権留保売買と双方未履行契約・対抗要件

  管財人等(破産管財人,再生債務者等,更生管財人)が,所有権留保の対象となっている目的物を必要とする場合,適用肯定説によれば履行選択が必要となり,被担保債権は全額共益債権ないし財団債権となります(破産法148条1項7号,民事再生法49条4項,会社更生法61条4項)。

 適用否定説によれば,破産手続及び再生手続では別除権の行使は否定ませんが,別除権協定や担保権消滅請求により,実質的に被担保債権の一部を破産債権ないし再生債権に確定させることが実務上行われることから,適用否定説の方が管財人等にとって有利です(この場面では,弁護士の役割が非常に重要になります。)。更生手続においても,目的物の時価部分が更生担保権となり残額が更生債権となり管財人に有利です。

 所有権留保売買の目的物が登記・登録を要しない(それらが対抗要件ではない)通常の動産の場合には,倒産各法の双方未履行契約規定の適用はないとするのが通説・実務のようです。

 この点について,印藤弘二弁護士は,自動車の所有権留保売買の場合に未履行双務契約ルールを適用すると,留保売主に別除権者としての地位を超える保護が与えられることになり妥当ではないという指摘をされており,山本和彦教授は,別除権性と双方未履行性の両立が真に可能かどうか,その場合の法律関係如何は今後の課題となるという見解を示しています。