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道路交通法違反の不起訴処分と免許取消処分の関係に対する考え方

 特に交通事故の刑事責任が問題になる場合、同時並行的に、免許の取消処分の手続きが行われることが通常であり、弁護士の立場からアドバイスを行うべき場合も多くあります。

 例えば、聴聞の手続きを経て免許取消処分が行われ、その後刑事手続きとしては不起訴処分となった場合にはどのように考えるべきでしょうか。

 故意が問題となるような構成要件について、検察官は、取調べの結果やそれまでの捜査も踏まえて、不起訴処分にした場合、その構成要件該当性について嫌疑が十分ではないことを理由に不起訴にしたものと考える場合が多いと考えられます。

 道路交通法上の行政処分と刑事処分は、目的や手続を異にするものであり、相互に独立した処分であることは当然のことではありますが、免許取消処分を行うに当たり検察庁とは異なる独自の資料が認定に用いられたとは考えられず、基本的には刑事記録のみにより処分をされていることや、不起訴処分と近接した日に行われていること等からは、行政処分と刑事処分とは全く同様の事情に基づき判断がされているといえる場合が多いでしょう。

 それにもかかわらず、刑事処分において不起訴とされた事実を認定して、全く逆の事実認定に基づき免許取消処分という行政処分を行うことについて、行政処分と刑事処分の目的の違いという抽象的な理由だけでは、一般市民の強い違和感を払拭することはできないでしょう。

 審査請求の審理は、愛知県では、愛知県警察本部交通部運転免許課が原処分の正当性を主張する書面を提出し、愛知県公安委員会(窓口は、愛知県警察本部警務部監察官室)が判断することになっています。

 証拠として収集されているドラレコの映像を確認することができ、刑事事件捜査とは証拠のアクセスの観点から異なる規律が採用されています。




無免許運転被告事件の情状

 無免許で運転してしまった場合にも、道路交通法違反等の罰金前科がある場合には、公判請求されるケースは珍しくありません。

 無免許運転をした行為自体を争うことは難しいケースがほとんどですので、情状を中心に主張や証拠収集を含めた立証活動が行われます。

 具体的には、発覚当日の運転経路をスマホのGPS機能を操作して裏付けとして使ったり、車検証等の走行距離と当該自動車に表示される走行距離の差を被告人の運転距離として特定するなどが行われます。

 当然、発覚した直接の経緯等も審理の対象となります。

 一旦無免許運転をしてしまうと、警察等に見つからない限りは日常的に犯してしまう傾向にあることは否定できませんが、検察官や裁判所からは、常習性や道路交通法規範に対する軽視や鈍麻を指摘されてしまうのも特徴といえるでしょう。

 被告人にとって重要な活動としては、いかに繰り返さないかについて具体的な対策を考えることです。

 同居する家族の協力や、場合によっては、勤務先の協力が得られるかもポイントになりえます。

 なお、二度と車には乗らないことを誓約する考え方もある一方で、免許取得することの必要性を十分に理解することで、欠格期間経過後には、再取得する方針をとり、再取得することの障害を取り除く方向で具体的に検討するべき場合もあります。

 特に、無免許運転をしてしまい、公判請求を受けて裁判対応が必要となってしまった場合には、弁護士にご相談ください。




NISA、iDeCoの違いと活用のポイント

 NISAは、日本版ISAの略で、イギリスのISAを参考に平成26年1月1日から施行されており、少額投資非課税制度とも呼ばれています。令和5年までのNISA(「旧NISA」といいます。)は、つみたてNISA、一般NISA、未成年を対象とするジュニアNISAがありました。令和6年から始まった新NISAでは、つみたて投資枠、成長投資枠に統合されましたが、全体としては大幅に拡充されました。

 iDeCoは、individual-type Defined Contribution pension planの略で、一般に、個人型確定拠出年金と呼ばれています。公的年金(国民年金・厚生年金)とは別の私的年金の位置づけの制度です。

 通常、株式や投資信託などの金融商品から得た利益に対しては20.315%の課税(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)がされますが、NISA、iDeCoとも、運用時に得た利益には課税されません。

 iDeCoでは、積立時において、積立額・掛金が所得控除され、所得税・住民税を軽減することができますが、原則60歳以降にしか受け取れないという制約があります。受取り時には、「退職所得控除」、「公的年金等控除」の適用を受け、一定金額までは非課税となります。余剰資金を強制的に積立できるという意味でプラスにとらえることも可能です。

 NISAでは、受取時にも課税がされません。

 しかしながら、あくまで投資によって利益が発生した場合に課税されないという制度ですので、元本割れのリスクや、損益通算ができないというのは、忘れてはいけないデメリットといえるでしょう。

 新NISAには、18歳以上という年齢制限以外には、特に加入資格の制限はありません。

 iDeCoは、次の方などを除き、国民年金の被保険者である65歳未満の方が加入できます。

① 国民年金の保険料納付免除(一部免除含む)、納付猶予を受けている方(障害基礎年金の受給者を除く)

② 農業者年金に加入している方

③ 企業型確定拠出年金の加入者の方でマッチング拠出(企業型確定拠出年金において、事業主が負担している掛金に上乗せして、加入者自身も掛金を拠出できる制度)を利用している場合

④ 企業型確定拠出年金の加入者の方で事業主掛金が年単位拠出の場合

⑤ iDeCoの老齢給付金を受給された方、公的老齢年金を繰り上げ受給された方

 なお、所属する弁護士法人では、企業型確定拠出年金制度を採用しています。

 iDeCoでは、職業ごとに上限が設定されており、例えば自営業やいわゆるフリーランスの方などの「第1号被保険者」の場合は月額6万8000円、会社員などの「第2号被保険者」は、企業年金への加入状況などにより、月額1万2000円から2万3000円とされています。

 新NISAでは、非課税の保有期間が恒久化されたほか、年間の投資上限枠が最大360万円、生涯に投資できる枠も1800万円と大幅に増え、十分な税優遇制度という評価もなされています。

 また、iDeCoは、加入している従業員の加入者掛金に、事業主掛金を上乗せして拠出するiDeCo+(イデコプラス)という制度もあります。




企業型確定拠出年金加入者がiDeCoに加入できる場合

1 iDeCoとは、国民年金・厚生年金の公的年金とは別に、給付を受けるための私的年金制度です。

  iDeCoは、individual-type Defined Contribution pension planの略で、イデコとよばれています。

  公的年金と異なり、加入は強制ではなく、加入の申込や、掛金の拠出、掛金をどのような金融商品に運用するかをご自身の選択で行い、税制上の優遇を受けたうえで、掛金とその運用益をもとに給付を受け取ることができます。

  iDeCoに加入するためには、iDeCoを取り扱っている金融機関等で加入手続きを行う必要がありますが、大手のネット証券会社は基本的に取り扱っているようです。

2 iDeCoは、以下の方を除き、国民年金の被保険者である65歳未満のすべての方が加入できることになっています。

・国民年金の保険料納付免除(一部免除含む)、納付猶予を受けている方(障害基礎年金の受給者を除く)

・農業者年金に加入している方

・企業型確定拠出年金の加入者の方でマッチング拠出を利用している場合(「マッチング拠出」とは、企業型確定拠出年金で事業主の掛金に上乗せして、加入者自身も掛金を拠出する制度です。)、事業主掛金が年単位拠出の場合

・iDeCoの老齢給付金を受給された方、公的老齢年金を繰り上げ受給された方 など

3 したがって、企業型確定拠出年金加入者であっても、マッチング拠出を利用していない場合や、事業主掛け金が年単位でない場合には、掛け金の上限の範囲であれば、加入できることになります。




新NISA制度のいくつかの留意点

1 はじめに

 株式や投資信託などの金融商品を売却して得た利益や、受け取った配当金等に対しては、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)がかかります。

 しかし、NISA(少額投資非課税制度)の適用を受けることにより、上記の株式や投資信託などの金融商品から得られる利益や配当金等は非課税の扱いを受けることができます。

 令和6年からは、このNISAが大幅に拡充されます(「新NISA」と呼ばれています)。

 もうすぐ始まる新NISAについて、いくつかの留意点を紹介したいと思います。

2 つみたて投資枠で購入可能な金融商品は、成長投資枠でも購入可能であること

 新NISAでは、年間投資枠の拡大とともに、従来のNISAでは、つみたてNISAは40万円、一般NISAは120万円という枠についてどちらかしか選択することができませんでした。

 しかし、新NISAでは、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の合計最大年間360万円まで投資が可能になっており、併用が可能になりました。

 つみたて投資枠の対象となる金融商品は、長期の積立、分散投資に適した一定の投資信託とされ、成長投資枠の対象となる金融商品は、上場株式・投資信託などとされ、個別株の購入も可能です。

このことから、つみたて投資枠と成長投資枠は、まったく別個の制度として理解され、それぞれの枠で、それぞれの典型的とされる商品への投資を検討しがちな印象がありますが、成長投資枠では、つみたて投資枠で購入可能な商品に投資することも可能です。

 したがって、成長投資枠も含めて、安定的とされ、実際人気のあるインデックス投資をすることが可能です。

3 非課税保有期間の無期限化しさらに枠の再利用が可能となったこと

 従来の制度では、一旦売却すると、その金額分について非課税の枠として利用することはできませんでしたが、新NISAでは、売却した金額の枠について、翌年以降、非課税で利用することが可能となり、大きなメリットとして注目されています。

 口座開設期間の恒久化も併せて、特に成長投資枠で値上がりが期待できる個別株を購入することも魅力的ですが、売却後に非課税枠として復活するのは、翌年の1月とされていることから、売却のタイミングについて難しい判断を迫られることになりそうです。

4 終わりに

 以上のとおり、新NISAは、十分な税優遇制度であり、賢く利用したいものですが、当然ながら元本割れのリスクもあります。

 弁護士として、投資の失敗により苦しんだ方の依頼を受けた経験からすると、軽々しくお勧めすることはできない面もありますが、少しずつ、利用してみるのもよいかもしれません。




上告、上告受理の申立て

 上告とは、一般に、未確定の控訴審の終局判決に対する法律審への上訴をいいます。

 民事訴訟法上、上告は、上告の提起と上告受理の申立ての二つの方法が制度として規定されています。

 上告の提起は、控訴審の終局判決に憲法違反または民事訴訟法に定める絶対的上告理由ががある場合にできます。

 絶対的上告理由は、判決裁判所の構成違反、判決に関与することができない裁判官の関与、専属管轄規定違反、法定代理権・訴訟代理権の欠缺、口頭弁論公開違反、判決の理由不備又は理由の食違いが定められています。

 上告受理の申立ては、控訴審の終局判決に法令違反があった場合に、上告裁判所が上告受理の申立てを受理した場合に限って、上告受理申立て理由が上告理由とみなされ、上告の効力が付与されることになります。

 手数料は、訴え提起の手数料の2倍に設定されています。




山口厚先生の新刊

 先日、最高裁判事を退官した山口厚先生の新刊が成文堂が出版されるようです。

 タイトルは、「犯罪論の基底と展開」で、最高裁判事の経験を踏まえた記載があるのか楽しみです。




不同意性交等罪における「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」とは

 令和5年7月13日から施行されている不同意性交等罪の構成要件である「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」の意味について、法務省が解説しています。

 それによれば、同構成要件は、「同意しない意思を形成することが困難な状態」、「同意しない意思を表明することが困難な状態」、「同意しない意思を全うすることが困難な状態」という3つの状況が想定されていることが明確です。

 「嫌だ」と言ったにもかかわらず性的行為をされてしまった事案においては、上記の「同意しない意思を形成することが困難な状態」、「同意しない意思を表明することが困難な状態」には該当せず、「同意しない意思を全うすることが困難な状態」に該当するかどうかを検討することになることも法務省の解説がなされています。




令和5年9月に改正された精神障害の労災認定基準の概要

 業務による心理的負荷表の見直しとして、いわゆるカスタマーハラスメント(顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた)、感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したことが追加されました。

 精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲が、悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認めることになりました。

 医学意見の収集方法を効率化するため、特に困難なものを除き専門医1名の意見で決定できるように変更されました。

 定期的に変更されており、弁護士も概要を把握しておく必要があります。




権利が係争中の場合の所得の帰属時期に関する権利確定主義の考え方

1 所得税法36条1項が、「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする。」としている趣旨は、現実の収入がなくてもその収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという権利確定主義を採用したものと考えられます。

 これは、理由付けの表現はいろいろあると思いますが、裁判例等では、所得税は経済的な利得を対象とするものであるから究極的には実現された収入によってもたらされる所得について課税するのが基本原則であるが、課税に当たって常に現実収入の時まで課税できないとすると納税者の恣意を許し課税の公平を期し難いこと、徴税政策上の技術的見地から課税庁が認定することが可能という意味で、権利の確定した時期をとらえて課税するのが妥当という説明がなされています。

 裁判官や弁護士にとっても、権利が法的に確定したという基準は、分かりやすい基準と思えますが、具体的な事案においては非常に難しい判断が要求されることは、一連の裁判例が物語っています。

2 具体的にいかなる時期に収入の原因となる権利が確定したと考えるかについては、収入の原因となる権利ごとにその特質を考慮して決定せざるを得ないとも最高裁判例や裁判例は述べているところです。

 ここで、収入の原因となる権利が争われている場合には、収入の実現の蓋然性も明らかではなく、権利が確定したとはいえないことから、裁判等で権利の争いが終結した時に権利が確定すると考えるべきという有力な学説があります。

 権利「確定」主義なのですから、権利が確定していない限り、すなわち係争が終結しない限り、収入は帰属しないというのは、非常に単純明白で分かりやすいとも言えます。

 なお、いくら係争中といっても、収入の帰属時期を恣意的に操作することを許さない観点から、当該権利の係争が、収入の時期を恣意的に操作するためのものではないことについても検討する必要があります。

 なれ合い訴訟という用語もあり、その可能性を一応検討するべきということです。

3 納税者の立場からは、権利が係争中の場合には、最高裁判例上確立していると考えられる、管理支配主義からの検討を要する事案もあります。

 管理支配主義は、その収入を受け取る権利が法的に確定していないにもかかわらず、それを「収入すべき金額」と扱う意味で、租税法律関係を不安定にするものであるから、その適用範囲は限定的・例外的であるべきというのが一般的な感覚だと思います。

 管理支配主義を採用したとされる仙台賃料増額請求事件(最高裁昭和53年2月24日判決)では、訴訟が終結していない段階で、増額を求めた大家側の賃料に相当する金額が借主側から支払われた事案であり、納税者側の意思・欲求(請求)に基づく権利が、厳密には法的に確定していない段階で実現したものという整理が可能そうです。

 いわゆる違法所得に関する利息制限法違反の利息が支払われた事件(最高裁昭和46年11月9日判決)においても、違法であるため当然保持する権限・権利は法的に確定はしませんが、まさしく納税者である貸主側の意思・欲求(請求)に基づいて納税者側に金銭が交付されたという整理が可能です。

 現実に収受された約定の利息等の全部が制限超過利息の分まで課税の対象となる一方、未収である限りは、約定の履行時期が到来しても、「収入すべき金額」にはならないと判断したものです。




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