名古屋市の弁護士 森田清則(愛知県弁護士会)トップ >> 個人情報保護等, 相続 >> 相続財産についての情報は,被相続人の生前に個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,直ちに相続人等の「個人に関する情報」に当たるとはいえない(最高裁平成31年3月18日判決)

相続財産についての情報は,被相続人の生前に個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,直ちに相続人等の「個人に関する情報」に当たるとはいえない(最高裁平成31年3月18日判決)

 原審広島高裁岡山支部は,「ある相続財産についての情報であって被相続人に関するものとしてその生前に法2条1項にいう「個人に関する情報」であったものは,当該相続財産が被相続人の死亡により相続人や受遺者(以下「相続人等」という。)に移転することに伴い,当該相続人等に帰属することになるから,当該相続人等に関するものとして上記「個人に関する情報」に当たる。本件印鑑届書の情報は,本件預金口座に係る預金契約上の地位についての情報であって亡母に関するものとして上記「個人に関する情報」であったから,亡母の相続人等として上記預金契約上の地位を取得した被上告人に関するものとして上記「個人に関する情報」に当たる。」と判断していましたが,最高裁は以下のとおり判示しました。

「⑴法は,個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み,個人情報の適正な取扱いに関し,個人情報取扱事業者の遵守すべき義務等を定めること等により,個人情報の有用性に配慮しつつ,個人の権利利益を保護することを目的とするものである。法が,保有個人データの開示,訂正及び利用停止等を個人情報取扱事業者に対して請求することができる旨を定めているのも,個人情報取扱事業者による個人情報の適正な取扱いを確保し,上記目的を達成しようとした趣旨と解される。このような法の趣旨目的に照らせば,ある情報が特定の個人に関するものとして法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるか否かは,当該情報の内容と当該個人との関係を個別に検討して判断すべきものである。したがって,相続財産についての情報が被相続人に関するものとしてその生前に法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,そのことから直ちに,当該情報が当該相続財産を取得した相続人等に関するものとして上記 「個人に関する情報」に当たるということはできない。

⑵本件印鑑届書にある銀行印の印影は,亡母が上告人との銀行取引において使用するものとして届け出られたものであって,被上告人が亡母の相続人等として本件預金口座に係る預金契約上の地位を取得したからといって,上記印影は,被上告人と上告人との銀行取引において使用されることとなるものではない。また,本件印鑑届書にあるその余の記載も,被上告人と上告人との銀行取引に関するものとはいえない。その他,本件印鑑届書の情報の内容が被上告人に関するものであるというべき事情はうかがわれないから,上記情報が被上告人に関するものとして法2 条1項にいう「個人に関する情報」に当たるということはできない。 」

 個人情報保護法,及び,相続事件に関する最高裁判例として確認しておく必要があります。